視察2日目は、札幌市の多文化共生教育について学びました。アイヌ民族への理解を図るため、札幌市では小学校4年生で、「開拓をした人々」の中で、アイヌ民族の学習を必ず実施しているそうです。
学者が作った副読本を保護者に購入してもらって活用する方法をとっています。札幌市内の小学校204校、1学年3クラスが平均だそうです。その中で副読本を使わない学校もあるそうですが、8割が使用してアイヌの人たちの正しい理解のために活用をしているそうです。ちなみに文科省の指導要領にアイヌはありません。

北海道の先住民族アイヌの人たちが築いてきた歴史や文化を学ぶ場所の一つに、サッポロピリカコタンがあり、そこも訪問しました。サッポロピリカコタンとは、アイヌ語で「札幌の美しい村」という意味です。独特の文化を育んできたアイヌ民族の生活や歴史、文化を楽しみながら学び、理解を深めることを目的に作られた札幌市に施設です。


私はかつて人権センターで働いていた時、アイヌ民族の理解と交流をはかるため、毎年北海道へ行き、帯広や平取や静内でアイヌの人たちとの交流、意見交換を行ってきました。それは1997年に「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(アイヌ振興法)が成立する前からのことで、成立後も何年間か交流をしてきました。「アイヌ振興法」ができるまでは、アイヌ民族を旧土人とする差別的な「北海道旧土人保護法」が存在をしていたのです。この旧土人法は、「アイヌ民族の保護」を名目とはしていますが、実際にはアイヌの財産を搾取し、同化政策を推進するために活用されたものです。アイヌの人たちは長い間、和人による収奪と同化を強いられてきたのだと、直接アイヌの人たちから話を聞いてきました。

「アイヌ振興法」が成立施行は、アイヌの人たちの「衣」「食」「住」「遊び」などの保存、継承に力を入れるようになったのを毎年実感してきました。しかしながら、アイヌの人に対する差別はまだまだ存在します。文化の伝承だけではなく、誤った理解をされないための教育は重要です。また北海道だけではなく全国にアイヌの人たちは生活をしています。自分がアイヌだと名乗れない人たちもたくさん存在するわけで、それはやはり差別をされることを恐れてのことなのです。差別のない社会の実現のために、人権教育、社会教育の重要性を今回も痛感しました。