9月19日に行った一般質問のもう一つの要旨は、「本人通知制度について」です。
本人通知制度とは、本人に同意なく第三者が戸籍証明書等を取得した事実を、行政から本人にお知らせする制度です。一昨年、戸籍証明書等の不正取得が全国的に行われるという事件があり、藤沢市でもこの事件で不正に取得された事実が発覚いたしました。私は、昨年6月の一般質問で、本人の知らないところで不正に取得され、流出し、何に使われているかわからない状態にあるということは、人権侵害であるので、被害者に事実を伝えないのはおかしい、市民の安全、安心を守るために市としてきちんと対応するべきではないのかと、藤沢市の考え方を質問し、副市長より「本人通知制度における課題の整理等の検討内容を踏まえ、個人情報保護条例及び情報公開条例に則した規定整備を行い、制度構築した上で、不正取得事件に対して早期の対応を図ってまいります。」との答弁をいただきました。藤沢市は昨年9月より本人通知制度を導入、施行しています。
導入から1年が経過しましたので、制度導入後の実施状況や、本制度の効果と課題などを今回の一般質問で行いました。
質問:不正に取得された方へ事実を通知した状況や、通知を受けた方からの問い合わせ状況は。
回答:昨年9月の本人通知制度の施行にあたり、制度導入の契機となった「プライム総合法律事務所」、「調査会社ベルリサーチ」による戸籍証明書等不正請求事件で、本市に請求があった件数は、延べ37件であり、請求書において事実確認ができた実人数21人に対して、通知を発送。
そのうちで問い合わせは4件、主に本人通知制度の趣旨に関する問い合わせで、制度の概要を説明し、ご理解をいただいた。行政書士や司法書士等の所属団体に対しても、再発防止の取組みについて要請を行っており、各自治体で本人通知制度の導入が進む状況を踏まえ、団体側からも会員に対して、制度への理解、協力を促している事例も確認している。
質問:この制度導入の効果をどのようにとらえているのか、また、課題なども検証されていたら教えてほしい。
回答:効果としましては、県内においても制度の導入が進み、平成26年7月1日現在、本市を皮切りに相模原、鎌倉、伊勢原、秦野、小田原の6市において本人通知制度が施行されている。
不正取得防止に向けた抑止効果が期待されることから、被害にあわれた方の人権を守るためにも有効な制度として全国的にも導入する自治体が徐々に増加している状況である。
一方、課題としましては、不正取得事件が発覚してから、処分が確定し、不正と認定されたのちに、国からの通知が市町村に届くことになり、市が本人に通知を発送するまでに、かなりの時間を要する場合がある。住民票請求書については1年、戸籍証明請求書は3年という保存年限が法律で規定されており、その年限が経過して、廃棄となってしまうと、被害にあわれた方の特定に至らず、市として本人通知ができないことも想定される。
事件が発覚した段階で、国等から情報提供される仕組みが整備されれば、早期の本人通知が可能となり、制度の実効性が確保できるものと考えている。
質問:情報提供が遅いなどの課題解消に向けて、取り組んでいることは何か。
回答:現行の制度は、市町村の裁量に委ねられ、自治体の要綱によって運用されているため、行政間で扱いが異なることや、制度の制定に足踏みをする自治体があることも、課題の一つと考えている。このような課題の解消に向け、現在、本市を含む県内市町村で組織されている神奈川県戸籍住民基本台帳協議会において、情報共有を図る中、課題等の解消に向けた検討を進めており、全国で起こりうる不正取得の情報を、遅滞なく収集する手段の確保や、法律上の整備等について、国に対し求めていく予定。
質問:本人通知制度には藤沢市の「事実告知型」の他に、「事前登録型」「松本方式」などがあるが、それぞれ課題もある。制度導入だけでなく、個人情報の保護を確立するために、藤沢市として今後どのようなことにとりくむのか。
回答:市民の個人情報については、行政機関が適正に管理していくことはもちろんだが、市民一人ひとりが、自己の情報を自ら守るとともに、第三者の個人情報の保護も同様に重要である、という認識を高めていく必要もある。
市としては、県内で最初に導入した自治体として、まずは、市民にこの本人通知制度の理解を深めていただくことが最も重要であると考えている。
本人通知をすることで、不正請求の事実を伝えるとことができたことや、所属団体を通じて抑止効果をもたらす成果があった反面、市民の方から寄せられた意見などでは、この制度自体が十分認知されていない現状もある。
今後、制度の趣旨に併せ、住民票や戸籍証明書といった自己情報の取得を、第三者に委ねることのリスクに対する意識啓発や、不正請求やその疑いがあった場合の情報開示の手段等にいても、広報紙やホームページなどを活用し、広く市民の方々へお知らせしいく。